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ここ10年ほど、にわかに話題になっているビーン・トゥー・バー。

ビーン(カカオ豆)からバー(チョコレートバー)までを一貫製造することで、アメリカで起こったクラフトチョコレートの流行りによって広まった言葉ですが、パリのショコラ界では、実はあまり深く浸透していません。

その理由はいかに?

 

■カカオ豆からショコラができるまでの過程とは

 

ショコラはカカオ豆から作られます。

カカオの木は熱帯植物で、主に高温多湿の地帯で栽培されています。

アフリカのコートジボワールやガーナやマダガスカル、南米ではエクアドルやブラジル、東南アジアではインドネシアやベトナムなどが、産地として有名です。

 

収穫された豆は現地で乾燥、発酵したのちに袋詰めされ、ヨーロッパに運ばれます。

その後、豆を焙煎して皮を取り除き、磨り潰して練り上げ、そして型に流し入れて冷やして固めることによってショコラへと変貌します。

 

このショコラをどう調達するかで、ショコラティエには主に3種類に分けられます。

  • 専門業者が作った業務用ショコラ(=クーヴェルチュール)を仕入れて加工し、商品を作りあげているタイプ

 ジャン=ポール・エヴァン Jean Paul Hévin、パトリック・ロジェ Patrick Roger など(圧倒的多数)

 

  • クーヴェルチュールを製造して他社に提供しつつ、オリジナル商品も展開しているタイプ

 ミッシェル・クルイゼル Michel Cluizel、フランソワ・プラリュス François Pralus など

 

  • 自社のためだけに製造したショコラを用いて商品を作っているタイプ (=ビーン・トゥー・バーのムーブメントを興している職人)

 ピエール・マルコリーニ Pierre Marcolini など

 

多くのショコラティエは、商品の要であるショコラを自社生産していません。

他社から仕入れたものをただ溶かしているだけといってしまうと、身も蓋もないのですが、カカオ豆からショコラを作るのは容易ではなく、また設備投資が必要になるため、他社に頼らざるを得ないという状況があります。

 

いくつもの制作工程を経るということで複数の機材が必要になり、また衛生管理を徹底していないと酸化して味が劣化するだけでなくカビが発生してしまうことも。

 

さらに、同じ味を作り続けるのも至難の業。

例えばワインでは、ブドウの収穫された年によって味の違いを楽しむテイスティングをしますが、ショコラの場合は、カカオ豆の生産地で味の違いを比べることはあっても、収穫年の違いを区別することはありません。

去年の味と今年の味が大きく異なると消費者が違和感を覚えかねず、さらに一定レベル以上の美味しさをキープできないと、顧客を確保して商売を成り立たせることはできません。

ショコラティエが、ショコラの自社生産に慎重になるのも理解できます。

 

 

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■パリでビーン・トゥー・バーがいまいち盛り上がっていない理由

 

カカオ豆の加工が難しいからというだけでなく、パリでビーン・トゥー・バーのムーブメントがヒットしない原因はさらに2つあります。

 

① フランス人が分業制を好むから

 

フランス人は、自分の仕事と他人の仕事の線引きがはっきりしています。

カフェやレストランで暇そうにしている店員さんにオーダーしようとして無視されたり、クレームを言いに行って「私には関係ない」と突き放されたりしたことはありませんか?

それは、あなたが座っていたテーブルやクレームの矛先が、その人の担当ではなかったからです。

与えられた使命以外のことをするのは、他人の仕事を奪ってしまうことになるので、自分の範疇外のことには手を出さないとフランス人は考えがち。

 

また、あれこれと手を出すと器用貧乏と揶揄されるのに対して、ひとつの分野を徹底して極める職人が崇められる傾向にあります。

 

クーヴェルチュール作りは専門業者にまかせ、そのショコラを引き立たせるプラリネ&ガナッシュ作りに専念して、ボンボンやタブレットを仕上げるという分業のスタンスが、作り手側にも消費者側にも根強くあるようです。

 

 

② フランスには優秀なクーヴェルチュールメーカーが多いから

 

フランスには世界的なショコラメーカーが数多あり、しのぎを削っています。

いずれのメーカーも巨大工房を構えて一流の機材を揃え、カカオ豆のチョイスから、製造、衛生管理まで知識と技術とを駆使して行い、ショコラ職人と消費者を満足させるクーヴェルチュールを製造しています。

専門メーカーが大量に製造することによって、味の安定と低価格化が可能になります。

 

またカカオの産地や配合率、豆の扱い方の違いによって、様々な味・テクスチャーのクーヴェルチュールが生まれるため、チョイスは潤沢。

メーカーによっては、提携するショコラ職人のために唯一無二のクーヴェルチュールを特製することも。

 

ショコラ職人は、わざわざお金や労力や時間やリスクをかけてまでクーヴェルチュールを自作しなくても、妥当な価格で美味しいものが手に入れることができるのです。

 

 

■おすすめクーヴェルチュールメーカー

 

  • François Pralus フランソワ・プラリュス

MOFの称号を持つ菓子職人の父を持ち、一流メゾンで腕を磨いたフランソワ・プラリュス。

高級レストランの御用達として知られ、エレガントで香り豊かなクーヴェルチュールを作っています。

奇をてらうことがないため斬新さは感じられないかもしれませんが、美味しさは確実。

パリにオリジナルショップあり。

公式HP:https://www.chocolats-pralus.com/jp/Francois-Pralus.html

ボンボン詰め合わせ。24個入・16ユーロ
絶品プラリュリーヌ。ふかふかのブリオシュに、ショコラのシップがふんだんに入っています。

 

 

  • Michel Cluizel ミッシェル・クルイゼル

一昨年に創立70周年を迎えた、3代続く家族経営のショコラティエ。

カカオ豆を生産者から直接買い付け、ノルマンディーの工房で洗練されたショコラを製造。収穫された畑の違いで味の違いを楽しめるタブレットや、スタイリッシュなボンボンを展開しています。

パリにオリジナルショップあり。

公式HP:https://cluizel.com/fr/

厳選した畑で収穫されたカカオ豆を用いたショコラのグランクリュ

 

  • Valrhona ヴァローナ

世界的に有名なフランス最大級のショコラメーカー。

リヨンの南60㎞のワインの名産地タン・エルミタージュに巨大工房を構え、カカオ豆を二重発酵させるなどといった革新的なレシピも考案するなど、ヴァラエティーに富む業務用ショコラを製造。

数々のショコラティエに提供し、圧倒的な知名度とシェア率を誇っています。

公式HP:https://www.valrhona.co.jp/

 

 

  • Weissヴェイス

1882年創業の老舗の中堅クラスのショコラメーカー。今では当たり前の、産地の異なるカカオ豆を混ぜてオリジナルの味を作るといったブレントスタイルをいち早く取り入れ、玄人受けする良質ショコラを製造。

公式HP:https://weiss.fr/

 

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